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旅の話。

羊の屋敷はすごくひっそりとしていた。そして広かった。
広さは時として寂しさを感じさせるし、水をこぼしたカーペットみたいな
静けさをそこにもたらす。

夢の中で羊が夢を食べていた。

はむはむ。

夢の中での羊はその人の夢が主食なんだと言っていた。
ためしに僕は『それはどんな味がするんだい?』と聞いてみた。

羊はなんでそんな当たり前のことを聞くのかという表情を浮かべながら、
僅かに首を左に傾けながら言った「夢に味なんかあるものか、俺たちはこれを食べているだけだ」

『ふ〜ん、そういうものなんだ』と僕。
『でもさ、大切なものなんだよ、それは少しくらいの味がついていたっていいじゃないか』

「たしかにな、昔にはそういう味のある夢だってあったのかもしれないな、でももう過ぎたことだ」

そういうものなのかもしれないと、僕は夢の中で思った。
全ては夢だったんだ。

はむはむ。




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