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どこまでも、いつまでも還らない日々がずっとあってそれは
動かし難し事実でもあるし、ある種の真実とも言えること。
すごく雨の降る秋までも僅かな日々にはとても寂しくもなり
それはどこにも辿り着かないイカダ乗りの運命みたいにずっと
ずっと心の中を彷徨うのだと想う。
誰にだって始めから悪気など生まれないし、悪気を持って生まれて
くる子供など独りもいないと願い想う。
小さな言葉がコンクリートの壁に移って跳ね返るボールみたいに
ありふれた日常がこんなにも素敵であることに気づきながらも
一方で全てのその灯火に終わりを告げたくもなるのだと言う。
書物を開けば悲しい物語り。それはきっと現実にも沢山あって
それをどうにか出来る訳でもないのに、自らの罪をかき消さんとする
魂の内側から鳴る確かな産声に導かれるままに、どこにも行けない
物語りの波間を彷徨う。
夜も更けるとそれらは大きな声を合わせ唄い始め、僕の心蝕む。
還らぬ日々はどこまでも還らぬままでいて、それと歩を同じくして
波間に紛れたイカダ乗りは岸へとは辿り着かない。
ある晴れた朝が来る時に全ては解決の糸口を井戸に落ちた蛙が
壁伝いによじ上れるだけの隙間を見つけたかのごとく想いながらも
それはまったくの杞憂であることに気づく。
遥か彼方に浮かび沈む夕日を待ちわびそれに頭を下げ、祈り、絶望し
彷徨い歩く日々。
どこにも向かうべき場所はなく、どこにも行く宛てもなく、どこにも
迎え入れてくれる場所もなく、そして還る場所もない。
それを寂しいと想うのか、それが当たり前だと言うのか。
降りしきる雨は止むことを知らずに、木と石仏で出来た神はなにも
語らない。神はどこに在り、どこに住むのかを知るすべもなく。
まばゆい光の落ち葉を捜し、旅人は今日も還る場所を持たない。



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