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年末のこと、うちが使っている運送会社のうちの担当だった人が退社した。

この人はすごく話が上手でとてもおもしろくて、いわゆる「ただの運送屋さん」
ではなかった気がする。毎日「出荷ありますか!?」と元気に夕方やってきて
いた。160%くらいの確率ですぐには帰らない。「じゃ、また明日で」とは言わ
ない。

荷物があってもなくてもまずは世間話、内容はアレコレ多岐に渡っていた。
今後やりたいこと、運送屋たるものとは、大切な荷物とは、扇風機が欲しい、
最近結婚した、子供ができた、子供が生まれた、「あれサーカスさん中から
いい匂いしますね、今日はカレーですか?」、暑いですね〜、寒いですね〜、
近所に◎◎さんていうオリンピックの選手が住んでましてね〜(その時偶然
にもその人が通る)「あ!毎度!がんばってくださいね!」などなど。

『なんでそんなんしゃべるん?』と一度聞いてみた。

「だって、僕はただ荷物を運ぶだけかもしれない。でもせっかくの巡り合わせで
この地域を担当させてもらって仕事をさせてもらえているんです。どうせなら
喜んでもらいたいし、いい気持ちで荷物を出してもらいたいんですよ」

いっつもうちだけじゃなくてきっと他でも話をしていただろうから、集配の終わる
のが遅くなって事務所に戻って残業なんですよねとも言っていた。

年末突然「実は明日で最後なんですよ、お世話になりました」って挨拶された。

仕事として次のチャレンジに彼は向かっていった。


彼のこれからに僕は期待する。



例えば荷物だってもちろんこの彼から事務所へ届いて、それから全国へと配送される。
ちょっと想像しただけでもそこには沢山の人の手が必要だし、知っている人、知らない
人の手を渡り歩く。例えばパスタに入れる人参だって種を作る人がいて、土を作る人
肥料を・・・自分達が手にした時にそこには多くの人の手を渡ってきたことになる。
「関係ない」と言えばそれまでかもしれないけどね。
ちょっと想像するととてもうれしい気持ちになるし、ありがたい気持ちになる。
素敵なことだと想う。

だから見えないところでも感謝が必要なんだと想う。