***








確約された時間などどこにもなくて、ただそれだけにいつも「今」はとても
ありがたく、もちろん偶然の連続に感謝するしかない。
いままでやってきたことがいったいどこに結び付いているのかなんて自分自身
さっぱり分からなかったりもするのだけれど、それは例えどんなに細くても
間違いなくどこかに結び付いていて、その結び目を決して切らさぬようにただ
ただ目の前にあることを懸命にやっているだけなのだと思う。
綱渡りみたいなもんだなって。
あとになって気が付いてみるとブランドの名前だってそんな風なものにも結び
ついているわけだしさ。細いワイヤー。MENTAL PUNK。

展示会をやるといつもいろいろなことを想う。
もちろん日頃からだって想うことは多いのだけれど、とりわけ展示会ってもの
は特別なのだと思う。自分も以前はそれらを廻り自分の店にとっての必要なモノ
を探し販売するのが仕事だったから。

誰よりも自分のお客さんよりも自分自身がそれが楽しくて仕方がなかった。
いつも思っていたこと。

「売れるモノ」を探すのではなく「売りたいモノ」を探す。

モノを売る仕事だから誰かの心の中のニーズに応えるのが仕事。確かにそう
かもしれなかった。でもいつも僕の優先順位は自分にとってのニーズであり
お客さんにその気持ちへの共感を持ってもらうことを前提にしていた。
だから自分が着ることが全ての大前提だったし、それを忘れるなら辞めて
しまおうといつだって思っていたのを思い出した。
今でも原点はあまり変わっていないのかもしれない。

あんまり器用な性格じゃないから、上手に説明とかも出来ないし言葉に出来る
ことの大切さも分かるけど最後はきっと言葉にならない感情や感覚のような
ものを信じてもいたい。理由はあるけどそれは説明出来ない。そんなモノが
出来たらいいなって。
それがまたいつまでも難しかったりすると思う。

展示会いつも顔を出してくれる方が僕に言った。

「本当にあなたは洋服のことを話さないよね」

正解だ。あまり話さない。
展示会を楽しんでくれて、あとは感じたままに着てみて気に入ってくれたら
それでいい。反面気に入らなかったらもちろんそれはそれで全然いいんだわ。

展示会の為の新作。その為に基本は長い時間を掛けて絵を描くのが今の仕事の
一つ。だから展示会は一つの大きなイベントみたいなもの。
展示会自体が楽しいってことも大切なんだってそれもいつも思う。

人が来てくれるのがとてもうれしい。
心から。

いつもより多く人と話す。
煙草を吸う人とは一緒に煙を吹き上げる時間を共有する。
だからついついいつもより吸い過ぎるわね。

展示会の終わりくらいになるとさすがにノドがやられる。

普段は飴なんて舐めることがないけれど、ちょっと痛みが気になるから。

今日は朝からLEMON DROP






by J.B







***