DESIGN NOTE

DESIGNER / URANO TAKAHIRO

カテゴリ: VOYAGE



Designer's note 2016.03.13_01




「美しく紡がれ汚れゆく言葉たち」


デザインの中に在るべき姿




どこかで聞こえる小さな泣き声。
果たしてそれはどこからのものなのか?

追憶の空。
真っ白な世界の中に佇む灰色の心。

ある朝の目覚め。
そこには誰も居ない。
「僕」さえも。

小さな声と、その泣き声を探して歩き続ける。

忘れていたもの。
忘れかけていたもの。
捨て去ってしまったもの。

数え切れない。

全ての過去。

いつか見た夕焼け空は赤かった。

いつか見た海の色は蒼かった。

僕だけが椅子取りゲームの勝者だった。



たったそれだけのこと。

たった。 



Write by URANO TAKAHIRO.


 
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***



例えばその雨は誰かの心を濡らすかもしれないし、誰かの心は潤すかもしれない。

階段を下っていくと見たこともないような風景に出逢うことだってある。
街からは随分と離れた港の多い街の隅。ちいさな犬や猫が辺りをコロコロと歩き
まわっていて、それは一見としてとても穏やかに見えるのだけれどそれぞれの「自由」
という言葉の持つ意味の中では決してそれは表には触れれない宿命的な在り方だったり
もするのだ。右手に挟んでいた煙草がそろそろ終わりを告げる時に僕はふとそういう
ことに気づいたのだ。

バイクを止めた場所はいわゆる街の入り口で、看板さえなければその街に「名前」すら
あることを住んでいる人間ですら忘れてしまうようなそんな街だった。みんなはそんな
街があるわけはないと言う。でも現実にそれは在るのだ。心の中にキリストを住まわせて
暮らし続ける老人達にそれが現実として在るように、それはそこに在るのだ。
大切なことはそれを認めるのか、認めないのか。中間のものほどこの世にはないものだから。

まだそれほど太陽の熱はあがり切っていない日だったから、薄いレインスーツは脱がないで
おこうと決めた。雨上がりの道を走り続けてきたから随分とズボンは濡れている。
雨は止んだが、雨宿りを続けるちいさなカエルがその目の命を携えている時間。
パラパラと読むともなく活字を追い続ける深夜の徘徊のように、行く宛てもない想いだけが
空の雲と同じように風に吹かれていることを知る。別にどの街だってよかったのかもしれない
し、どこの空であってもそれは変わらないのかもしれない。

バイクに跨がりまたこの知らない街すら通過する。通り過ぎる。それにしてもあらゆる
多くの、自分にとってのほとんど全てといっていいほどの荷物とかがり火を通り越して
きた。どこかに立ち止まる道も街も空もあったはずなのに、それを許すことが出来ずに
ずっとシートから降りることもなく、それはきっと畏れだったのかも知れないし、わからない。
ただただ、そこには目に見える程に見たこともない風景が、情景が、静寂があったからかも
しれないってこと。

だれも知らない看板もない街を求めて僕はまた走り出すのかもしれない。

雨が降る日に、五月の雨にうたれて。



***
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***


僕らは旅をするように、海原を小さなボートで彷徨うようにたゆたう。

外では大きなヒカリの雨が雷鳴とともにさんざめく。

どこへもいけない気持ちが唯一の彼の支えでもあり、窓から見える木に
見えるただ最後のひとひらの葉のようなものかもしれない。
後ろ足が片方行方知れずとなった小さな犬が懸命な足どりを辿りながら
道を散歩している。後ろからは小さくなった老婆。その中にきらめきを
憶える。

雨は数を増やし、屋根はけたたましい水辺のような音をあげる。
ずぶ濡れになったまま、男は立ち尽くす。バイクはガレージに預けたままだ。
ファスナーから取り出した煙草は随分と水を含み火はつかない。
雨は一向に止む気配を見せない。
小さな声で言葉を生み出す。
「ここはどこだろう」

雲は彼方へ向かっていった。
また、架の土地で雨を降らし続けるのか?

ヒカリがまた生まれる。

この世界で。

少しでも。

小さくても。

雨は大地を濡らし、そこに命を宿す。花が華を生み、火が灯火を呼びように。
灯火には輪が出来る、人が集まり始め唄が聴こえるようになる。凛として、凛として。
どこかで誰かがギターを弾いている。正しくはつま弾くような、消えそうな音。
リズムではなく震えのような嘆きの音。
夢はだれにも侵せない大切な時間。

ガレージはそこに集まる男達になにを分け与える?
それはアンプのような力を持てるのか?
あらゆる文化やカルチャーが叫びをあげて、それは大きなうねりとなるのか?
あらゆる力や魂やマインドや悲しみや愁いや暴力や知性の欠片やなくした片方の影や
夢や鍵、忘れることの出来ない遥か彼方に置いてきた手紙のこと。
全ては増幅を重ね、新たな時代を生み、新たな華をそこに咲かせるのか、出来るのか。

左の腕は痺れをきらしている。

あの輝きを取り戻したくて。

この旅が終わらないように。

すべての言葉が嘘にならないように。

かがり火に集まる少年達。



***
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***



drawing








旅の話。

羊の屋敷はすごくひっそりとしていた。そして広かった。
広さは時として寂しさを感じさせるし、水をこぼしたカーペットみたいな
静けさをそこにもたらす。

夢の中で羊が夢を食べていた。

はむはむ。

夢の中での羊はその人の夢が主食なんだと言っていた。
ためしに僕は『それはどんな味がするんだい?』と聞いてみた。

羊はなんでそんな当たり前のことを聞くのかという表情を浮かべながら、
僅かに首を左に傾けながら言った「夢に味なんかあるものか、俺たちはこれを食べているだけだ」

『ふ〜ん、そういうものなんだ』と僕。
『でもさ、大切なものなんだよ、それは少しくらいの味がついていたっていいじゃないか』

「たしかにな、昔にはそういう味のある夢だってあったのかもしれないな、でももう過ぎたことだ」

そういうものなのかもしれないと、僕は夢の中で思った。
全ては夢だったんだ。

はむはむ。




***


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その鉄の塊に跨がったままどこへ行こうというのか、あたりはしんとしていて
吹く風さえもその音を奏でないように気を配っているのが分かる。
今日は深夜のステージになるらしかった。男は弦をゆったりとした慣れた手つきで外しにかかる。
もう随分と錆び付いた弦だった気がする。
最後にあそこに立ったのはいつだったのだろう?
想い出そうとすると頭の左側が痛むんだ。別に忘れたことだ、思い出す必要なんてないのだろう。
履き慣れたブーツは踵が擦り切れそうだ。地面を鳴らしすぎたためだろう。
ジャケットの上からコートを羽織る。外は薄ら寒いハズだ。

ライターの石を削ったら一思いにここから出よう。バイクも彼と同じく歳をとった。
やつれちゃいないが、決して見るものに勇気を与えられる程元気ではない。
ステージは深夜、まだ向かうには時間があるな、男はゆっくりと細い道を海へと向かう。
風はある、でもここも静かだ。

もっともらしいことを言う連中の顔を見るのに飽き飽きした。
この道の先にはなにがある。錆びた鉄のような道。
久しぶりのステージだ。
OLD GT STAR 忘れようとしていたあの唄から始めよう。
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旅人の噂が聞こえる

海の向こうであった出来事

旅人達はみなかがり火にあつまりささやくように語らい合う

海のむこう

海のむこう

インドで逢った旅人はちいさな声でこう言った

『噂だけは信じるな』

見えないひかり

見えない灯火

擦り切れた靴に煤けたオーヴァー

夢のむこう

旅路の果てに

消えたコイン

明日からの使者

彼の巡礼はどこまでも続くのだろう

***
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転がっているのは銀色の石。
擦り切れた葉っぱの緑の中に、轍のできた道の向こうに。
誰もそれを観もしないし、誰も気がつかない。ちいさなちいさな銀色の石。
夢の向こうに置いてきぼりをしてしまった幼い記憶と記録のように、それは
だれの目にも止まらないものなのかもしれない。
輝きの向こうに何を見た?
きらめきのこちら側になにがある?
緩やかな丘の上から見えた世界はすこしだけ傾いた夕日のおかげで、全部を少し
許せる気がした。
逃げてしまった飼い猫を探す人がいる。街の中には張り紙だらけ、
『ネコを探しています』
逃げてしまった猫は見つからない、悲しいこと。
丘の上からはひっそりとした海が見える、見渡せる。
水平線の向こうではまだ闘いが終わらない。大きな炎が揺れている。
手紙を書く少年、文字が歪んで滲んでいる。ちいさな灯りをともしては宛名のない
手紙を書き続ける。何枚も、なんまいも。
銀の石を探しに僕は歩く。
ちいさな道をテクテクと。
僕の視力は落ち続け、目に映る世界は日に日にぼやけて鮮明さを失いつつある。
それは、時に良いことでもあり悪しきものでもあるのだけれど。
暗闇が僕に訴えかける。
その目を失えば君の世界は自由になると。
その光さえ失えば君の世界は君だけのものになると。
目を閉じて耳を塞ぎ、僕は銀の石を探し続ける。

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春先の蛇みたいな気持ちで、ゆっくり歩く。
その先に別になにがあるって訳ではなさそうだけれど。
小さな河と月明かり。
ゆったりとした季節が廻る。
豊かな灯りに照らされて、想い出達はどこへいく。
どこへ、どこへ。
ほの暗い暗闇をそっと抜けるとその先に、朽ちた小屋があった時、
胸の奥の、ずっとずっと奥がふるえ出す。
そう、ちいさいちいさいネズミのような気分でさ。
足跡はそう遠くないのだけれど、そこからどこへも目指せずに、
もしかしたら、始めから、始まりからそれがなかったかのように。
雲の切れ間に見えた月。
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どうにしたって流れは早く、それらに乗らないにせよ、それはやっぱり圧倒的な
スピードで僕らを襲い、ともすれば気がつかない間にもそれに流されてしまいそうには
なるのだろう。そうならないように、日々かがり火を追い求め懸命に足を止める。
足を止める勇気と歩を進め、帆を立てる勇気を持つ事。それらは相容れることなく、
それと同時に同じ場所に生きているのだと感じる。
緩やかな河の流れのように、その流れの中にできる小さな滝壺のように、時に激流の
ように。
そうありたい。

しゃべるカカシの目はどこを見るのか?
還る場所を失った渡り鳥はどこへ向かうのか?
タイヤのない車はどこへ走るのか?

今居る場所の土を蹴る。どうしたってわけではないけれど。
ちぎり破いた絵本のような気持ち。
それはそれでいいのかもしれないし。

ゆるやかに、おだやかに。

煙の中で見た、朝日のように。


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1

2007の最後に。

今年の道程を経て。続きを読む
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